潰すものは潰しましょう。それも、速やかに潰しましょう。

過去のM&Aの成功例・失敗例を見ていたところ、「そごう」や「ダイエー」という名前があって懐かしく思い出しました。

 

そごうが民事再生法の適用となったのが2000年7月、ダイエー産業再生機構の支援対象となったのが2004年12月でした。

 

既に過去の話で忘却の彼方かもしれませんが、この両社の共通点は、どちらも本質的な問題が「銀行の救済」だったということです。

 

そごうは旧・興銀(現・みずほ銀行)銘柄で、当時色々と債権放棄や預金保険機構によるそごうの救済案が出ていましたが、要するに貸し込んでいた興銀を救済するものでした(そごうに潰れられたら困る)。

 

* ちなみに、当時のそごうの会長は水島廣雄さんで、彼自身も興銀の出身でした。興銀マンとしてサラリーマン生活を送りながら「不動担保の研究」で法学博士号を取得するなど、担保法に精通。その後、そごうが土地を担保に拡大路線を進めていってバブル崩壊で破綻してしまったのも不思議な関係を感じます。

 

* あと、ついでに言えば、ハウステンボスも有名な興銀銘柄でした。興銀や長銀がダメになっている中、その不良債権先の one of them を救うことにあまり意味はありません。「ネクストそごう」、「ネクスハウステンボス」が出てくるだけです。



ダイエーも潰せなかった理由は、UFJ銀行にありました。ダイエーを潰してしまうとUFJ銀行(現三菱東京UFJ銀行)が潰れてしまうからです。ダイエー問題は要するにUFJ問題でした(結局UFJ銀行は潰れてしまいましたが)。

 

後知恵的に今から見れば、そごうは西武と合併し、そのあとセブン&アイHDの傘下に入ることになります。ダイエーはイオンGrの傘下に入りました。残念ながら、今現在、どちらも各社のお荷物である点は否定できません。もはや百貨店やGMSという形態自体が消費者に支持されていないという構造的な問題です。



色々と書いていますが、結論としては、「潰れるべきは潰す」ということです(*^^*)。

もっといえば、「きれいに速やかに潰す」ということです。



2社とも構造的に見れば、不動産価値の下落という面はあるにせよ、消費者に支持されなかったということです。2018年の今日でも、三越伊勢丹は早期退職金に5000万円上積みしてリストラを進めていますし、イオンもセブン&アイもGMSは赤字です。

 

現在、百貨店がなくなって困る人がどれだけいるのか、ということをよく考えるということです。産業自体に需要がなくなっている場合は、その業態を続けることはできません。スーパーについても、コンビニ含め、大体できるものは他に沢山あるのです。人間には自然権として生存が保証されていますが、企業がこの世に存在するにはそれなりの理由が必要です。



そごうもダイエーも結局のところ(当時の)銀行問題でした。

 

預金保険機構産業再生機構のようなモノを持ち出して、銀行救済に当てるということは、一企業を国民負担で救済することと同義です。しかも、別にその企業を強くするわけではなく、あくまで負債を免除する程度の話であって、その後また生き残れる保証はありません。

 

よく「too big to fail(大きくて潰せない)」といいますが、銀行が潰れてもそこにマーケットがあれば必ず別の企業が参入します。そのサービス自体は代替されるはずです。

むしろ銀行救済を盾にして、マーケットも存在しないような企業を生き延びさせることの方が罪深いはずです。長期的に見て社会の活力を失わせてしまいます。

 

もちろんセーフティネットは必要です。

しかしそれは「働かなくても大丈夫」「勉強しなくても大丈夫」という共産主義社会を前提にしていない以上、「新しい必要なスキルを身に付ける」ための猶予期間に過ぎません。そういう社会的なコンセンサスがあるからこそ、本当に働けなくなった場合のセーフティネットが保証できるはずです。



とにかく東芝だろうがシャープだろうが、経営が失敗しているのであれば一旦リセットして潰す必要があります。経営に失敗すれば退場するのです。原理原則ははっきりさせておくべきで、そこに「大企業だから」と例外を設けるべきではありません。

シャープのようにブランドや技術がしっかりしていれば他の企業が救ってくれます。国に救済するスキルなどないのですから、そこは市場に任せるしかありません。

 

日の丸連合でうまくいった試しは残念ながらありません。

 

温故知新といいますか、東芝問題の成り行きを横目で見つつ、我々は歴史に学んでいきましょう!